介護保険申請の実験談

増澤喜一郎 
 何でかんで理屈ばかり言っているより、やって見なきゃ分からん!とは云うものの、さて実際に私が申請(介護保険)する羽目になるとは夢にも思わなかった。
 やるとなると、胸に聊かの戸惑いが生じてしまう。
 聞いてください。
 話は少し前にさかのぼります、皆様のお力により発起人会を開き「総ぐるみ福祉の会」発足。ただいま、県から8月初旬に認可される段取りになりました。今、毎月2回理事会を開き、介護保険事業の計画を具体的に立てています。ところが前月の理事会の話の中で、介護保険を受けるにあたり、利用する人は実際どのような調子で手続きを踏んでゆくのか、又、どのくらい時間がかかるものか申請をしてみる必要があるという意見が持ち上がりました。

 其処までは全くすばらしい意見ですが、そこから先が一寸まずくなっちゃった。
 「そうヨそうヨ。誰かやってみて!あッ 増澤さんが最適だ。やってヨ。」
と、肝っ玉カアちゃん宮崎女史(理事長)ズバリのご託宣。おまけにそれで決まりと言う顔で彼女は手をたたく。他の男子四人とも共。

 「そうだ。ソウダ。それがいい。」
 男性四人誰も同情しない。薄情なもの。
 「困ったなア。」
 と、私。
 「何が困るのヨ。落っこちれば健康と云うことで、結構なことじゃあないの。ついでにおくさんも、ねッー。」
 ガッチリ念をおされちゃった。

 ぐずぐずしれいるうちに、又理事会の日がやって来た。
 「増澤さん。あれどうなったの?」
 今日はやさしくケラケラ笑う。どうもかなわねエナ。傍らで聞いていた一柳さん(副理事長、介護ヘルパー資格者)と大橋さん(理事、大橋八重子さん介護中にて介護にくわしい)二人して、
 「増澤さんは八十だから十分資格有りだ。駄目であってもーー要介護で無くてもーー訪問調査を受けておけば、後々二度目の申請の時有利になる。」
 本当かね。そんなうまい事あるのか。兎も角、全員理事の決定事項。みんなからトコロテンで押し出された心境。

 其の夜、恐る恐る妻に本申請に就いて話す。愚妻曰ク
 「それは結構な事じゃないの。申請して三ヶ月、四ヶ月も経ってから決定されたんでは、いざと云う時に役立たない。今のうちから知っておく事が必要ネ。」
 ときた。びっくりしちゃった。女って此の様な時には割り切っちゃうんだな。男は矢張り何処か格好を付けているだけで駄目なものだ。明日夫婦でゆく事にする。蒸し暑い。雨しきりに降る。夜の梅の木がゆれている。今晩から明日のかけ颱風が来るとの事。俺も、もう八十になっちゃったか。
 
 ついに去る7月11日決行。
 小生内心は、本申請に何て云えば良いか?ドキドキ。だって認定調査の申し込みは、「介護を必要とする人」と本に書いてある。
 俺は介護を必要とするのか?と自問自答し続けた。
 区役所一階介護相談窓口3の席に座る。

 話は書き出しの言葉にもどりますが、何でかんで理屈ばかり言っているよりやってみなきゃわからんー。まさにその通り、私は今まで知らなかった「すごい事柄を発見した。」